フルトレーラーとは
荷台を含めたすべての重量をトレーラーだけで支える構造になっている貨物車両がフルトレーラーです。2つ以上の車軸を持ちますがエンジンは付いていないので、フルトラクター(トレーラーヘッド)と呼ばれるけん引車に繋いで走行します。連結した状態をフルトレーラーと呼ぶこともあります。
フルトラクターも荷台を持つので一見すると大型トラックがフルトレーラーをけん引しているようにも見えますが、けん引具や強力なフルエアブレーキを備えている専用車両です。
フルトレーラーの運転に必要な免許
大型免許
大型免許を取得すると車両総重量11t以上、最大積載量6.5t以上の大型自動車を運転できます。数十トン単位の荷物を積んで走るフルトレーラーのドライバーになるには必ず取っておくべき免許の一つです。
大型免許の取得に必要な条件は下記の通りです。
大型自動車免許の受験資格
- 満21歳以上かつ普通免許などの自動車免許を取得して3年以上の運転経歴がある人
大型免許の適性検査の項目と合格基準
- 視力は両目で0.8以上、片目のどちらも0.5以上あること。
- 深視力検査にて三棹法と呼ばれる装置を使い、3回測定で平均誤差2cm以内が条件。
- 深視力とは奥行きや立体感を捉える能力です。3本並んだ棒のうち、真ん中だけが前後に動いて1列になったときを正しく判断できるかというテストです。
- 聴力は10mの距離にある90デシベルの警音器の音が聞こえること。
- 色彩識別では信号機の色(赤・青・黄)が識別できること。
大型自動車免許の取得方法
- 大型自動車免許の取得コースのある教習所に通う方法と、合宿免許に参加して短期間での取得を目指す方法、そして運転免許試験場に出向いて技能試験だけを受ける一発試験の3通りあります。
- いずれの場合も学科試験は免除されます。
- 平成19年に道路交通法が改正され、大型自動車免許の取得に必要な項目として路上練習、路上試験、取得時講習が新たに追加されています。
- そのため一発試験の構内試験で合格してもまだ仮免許の状態で、公道での教習を経て路上試験にも合格しないといけません。
大型自免許取得に必要な費用
大型免許取得にかかる費用は、他に保有している免許で差がありますが、中型8t限定免許を持つ人で比較すると下表(税込)のとおりです。
教習所 | 23~33万円前後 |
合宿 | 20~23万円前後 |
一発試験 | 4万円前後(路上試験代を含む) |
けん引免許
牽引免許(第一種免許)はトレーラーのような750kgを超えるけん引車両の運転に必要です。牽引免許だけでは自動車の運転はできないので、例えばフルトレーラーを運転するには大型免許と牽引免許の両方持つことになります。
けん引免許の取得に必要な条件などは以下のとおりです。
牽引第一種免許の受験資格
- 満18歳以上かつ普通自動車などの四輪免許のいずれかを保有していること。
適性検査の項目と合格基準
- 視力は両目で0.8以上、片目でそれぞれ0.5以上あること。
- 深視力は、三棹法の装置を使った試験を3回行い、平均誤差が2cm以内であること。
- 聴力は10mの距離にある90デシベルの警音器の音が聞こえることです。
- 色彩識別は信号機の色が識別できていればOKです。
牽引第一種免許の取得方法
- 牽引免許(第一種免許)を取得するには、教習所に通う、合宿で取得する、一発試験の3種類があります。
- 第一種の牽引免許には学科試験は無く、技能試験のみとなります。
- 試験場のコースを走りながら右左折やS字カーブ、方向転換などの項目をテストされます。100点からの減点式で70点以上が合格ラインです。
牽引第一種免許の取得に必要な費用
牽引第一種免許の取得にかかる費用(税込)は下表のとおりです。
教習所 | 15万円前後 |
合宿 | 12万円前後 |
一発試験 | 6,100円(受験料+試験車使用料+免許証交付料) |
一発試験は最小限の料金で済みますが、一度で合格しなければ受験回数分の費用がかかるので注意が必要です。教習所や合宿に通うと一定の費用はかかりますが、指導教官に教わりながら十分な練習時間が取れるので、けん引車両の独特な動きをしっかり学べます。
けん引第二種免許
牽引免許(第二種免許)を取得すると乗客を乗せたけん引車両を運転できます。
ただしトレーラーバスなどの連結バスは国内で現役の車両がほとんどありません。車両2台を蛇腹で繋いだバスは切り離しをしないので『連節バス』として区別され、大型二種免許で運転できます。
けん引第二種免許の受験資格は満21歳以上で、かつ他の四輪免許を通算3年以上保有、もしくは他の第二種免許を保有していることです。他の身体条件はけん引第一種免許と同じです。
学科試験があり9割以上の合格点が必要ですが、他の第二種免許を持っていれば学科試験は免除されます。
実技試験は第一種の牽引免許よりも合格点が高く80点以上となっているため、難易度は高く、合格率は毎年2割程度です。
フルトレーラーの運転手になるのに持っていると便利な資格
フルトレーラーの運転手として仕事の幅をさらに広げたいなら資格取得に挑戦すると良いでしょう。
- フォークリフト運転技能講習修了証を取得しておくと、構内での荷物の積み下ろしをするときに役立ちます。座学講習を受けて修了試験に合格すれば、最大荷重1t以上のリフトを自分で運転できるようになります。
- 危険物取扱者資格の乙種4類を取得すれば、ガソリンを積んだタンクトレーラーの運転手になれます。危険物取扱者免状の携帯が必要です。
フルトレーラーの運転の注意点
フルトレーラーには荷台の前方に台車がついたドリー式と、荷台の中ほどに車軸が寄せられたセンターアクスル式の2種類があります。
ドリー式は車軸が前後にあるため荷重が等しく分散されるメリットがありますが、連結部が2ヶ所あるので運転が難しいです。
センターアクスル式は連結部が1ヶ所なのでセミトレーラーと同じように運転できるメリットがあります。
連結部を持つトレーラー運転時において特有の危険な現象を3つ紹介します。もちろんフルトレーラーにも発生しますので、しっかり頭に入れておきましょう。
- ジャックナイフ現象:ブレーキロックがきっかけで連結部を中心に激しく『くの字』に折れる現象です。
- スネーキング現象:被けん引車両が左右に振られながら蛇行することです。スピードの出過ぎや荷物バランスが悪いときに発生しやすいです。
- トレーラースイング現象:トレーラーブレーキがロックして制御不能になり大きく左右に膨らみます。急なブレーキ操作やカーブでのスピードの出しすぎが原因です。
フルトレーラーの内輪差とは
前輪と後輪が通った軌跡に生じた差のことを内輪差といいます。
自動車に必ず発生する内輪差は車軸間の距離、すなわちホイールベースが長いほど大きくなる傾向があるので、例えば大型トラックの内輪差は普通自動車よりもずっと大きくなります。
長い車両をけん引して走るトレーラーだと内輪差がさらに大きくなり、なかでもセミトレーラーはホイールベースが長いので内輪差が最も大きくなります。
フルトレーラーはセミトレーラーよりも全長が長いので、その分だけ内輪差も大きいように見えます。しかしフルトレーラー1両の長さは運転のしやすさを配慮してセミトレーラーよりも短めに設計されていることが多いので、見た目ほどの内輪差は発生しません。よってフルトレーラーの内輪差はセミトレーラーよりも小さく収まっています。
ただし、後述するダブル連結トラックのようにセミトレーラーを2つ繋いだような構造を持つフルトレーラーとなれば、おのずとホイールベースも長くなるので内輪差も大きくなり、一般道の交差点などを曲がるのは困難を伴うでしょう。
フルトレーラーの運転は右左折にコツが必要
フルトレーラーの全長は大型トラックやセミトレーラーよりも長いので、特に右左折時の運転には細心の注意を払います。
車両が交差点を通過し終えるまで時間がかかることを念頭において、対向車が来ていないか、曲がる先の道路状況はどうかなど事前に確認するようにしてください。
巻き込み確認も大切です。サイドミラーや助手席横の安全窓などを利用して目視を行い、道路脇をすり抜けようとする自転車やバイクがないか確認しましょう。
右折時はできる限り大きく曲がるようにするのがコツです。小さく曲がりすぎると中央分離帯や反対車線に停まっている信号待ちの車にぶつけてしまう恐れがありますし、タイヤがねじれて負担になるからです。
左折時のコツは内輪差を意識してハンドルを遅らせて切ることです。具体的には運転席が交差点に入った付近からハンドルを切り始めるくらいのタイミングです。ただし大回りしすぎるとオーバーハングの分だけ反対車線にはみ出ることがあるので注意しましょう。
右左折ともに横断歩道を横切る際には運転席の真ん前が死角になるので、前方を渡っている歩行者がいないかをアンダーミラーで確認しながらゆっくりと通過するようにしましょう。
フルトレーラーのカーブは内輪差に注意
フルトレーラーで峠道などの道幅が狭い道路や強めのカーブを走行するときは対向車とのすれ違いに特に神経を使います。
右カーブを曲がるときは内輪差によってトレーラーの後輪が道路内側に寄りやすくなりますし、左カーブでは荷台の前にある角(肩)が走行ラインよりも外側にはみ出てしまうからです。
トレーラーの運転で事故を起こさないためには、道路幅を目一杯有効に活用して車両の一部が反対車線に出たりしないよう注意して走行するよう心がけましょう。
フルトレーラーの運転はバックが難しい
フルトレーラーの運転はセミトレーラーより難しいとされています。主な理由は連結部分が複雑な動きをするのに加えてハンドル操作をしてから実際に向きが変わるまでに時間がかかるからです。
特にフルトレーラーのバックの運転はベテランでも苦手とする人が多いです。ドリー式の場合は2ヶ所の連結部が自由に可動するので、思った方向に車両を向けるのが非常に困難です。よってバックの練習をするなら連結部が1ヶ所のセンターアクスル式を使うことをおすすめします。
どうしてもドリー式のフルトレーラーを使ってバックを行う必要に迫られたなら、連結部分を1つ減らすと良いです。台車が軸ごと回転する仕組みになっているターンテーブルの動きを固定させるのです。連結が1ヶ所になれば、セミトレーラーの後退テクニックを使えます。
まずは感覚をつかむため、直進バックから練習すると良いでしょう。バックをするときは向けたい方向と逆にハンドルを切るので、荷台が右に流れてきたらハンドルは右に切ります。左ならその逆です。これを小まめに繰り返すことで直進バックができます。
フルトレーラーで車庫入れを行うときは他の人に誘導係を頼むなどして慎重に行いましょう。駐車箇所の状況が不安なら無理をせず運転席から外に出て確認することも大切です。
フルトレーラーの急ブレーキは事故のもと
トレーラーが引き起こす恐れのある危険現象の多くは、急ブレーキや減速しきっていない状態で2段飛びのシフトダウンを行うといった急制動が原因です。無理なシフトアップも失速の原因となります。
例えばフルトレーラーで走行中に急ブレーキを踏むとどうなるか考えてみましょう。ブレーキがロックするまで強く踏み続けると、トレーラーがその減速について行けず、慣性の力が働いて車体が激しく振れたり折れ曲がったりしてしまうのです。
例えばジャックナイフ現象が出ると自分の車両が大きなダメージを受けるだけでなく、人や自動車、建物などと接触して大事故に繋がりかねません。急ブレーキを踏まずに済むよう、先を見通し余裕を持った運転を心がけることがポイントです。
フルトレーラーの全長の規制緩和とは
物流の輸送効率をさらに引き上げ、慢性化するドライバー不足の解消を目的として、ダブル連結トラックと呼ばれるフルトレーラーの導入が始まっています。これまでの車両長21mまでの規制を25mまで緩和することで大型トラック2台分の荷物を一度に運ぼうとする試みです。
2016年から始まった実証実験を経て、2019年1月には特殊車両通行許可基準(通達)が改正され、一部の高速道路などに限定して実用が開始されました。今後も対象路線を広げていく予定です。
フルトレーラーの運転手の求人情報を探す方法
トレーラー運転手の年収は約500万円~600万円が多く、他のトラックドライバーよりも高いです。フルトレーラーを乗りこなせるようになれば仕事の選択肢が大きく広がります。
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