事業者向けのタンクローリーの補助金とは
緊急配送用タンクローリー補助事業の目的とは
タンクローリーは、ガソリンや灯油など、社会に欠かせないエネルギーの運び役として活躍していますが、地震や台風などの自然災害時は、燃料供給の命綱としての役割も期待されます。
こうした中、機動的燃料供給体制等構築支援事業(緊急配送用タンクローリー)補助事業は、災害発生時に活躍するタンクローリーの台数確保を目的としたもので、国が購入費用の一部を事業者に補助金として助成する事業でした。
緊急配送用タンクローリー補助事業の内容とは
緊急配送用タンクローリー補助事業は、申請者資格を持つ給油所や配送拠点(貯蔵所など)を運営する揮発油販売業者、または石油販売事業者らが、タンクローリーの購入費を経費として実績報告書にまとめて全国石油協会に申請することで、その一部が補助金として交付される仕組みでした。
補助金の対象は幅広く、車両本体や付帯設備の費用だけでなく、登録代行費用や消防納付金も含まれます。新車だけでなく中古車も対象です。ただし、シャシーのみ、タンクのみといった購入方法は認められず、完成車の状態で契約する必要があります。
補助金の上限額はタンク容量10klを境に設定され、10kl未満は最大400万円、10kl以上は最大1,000万円です。ただし、補助率は対象額の1/2以下です。例えば、800万円、10klの中古タンクローリーの購入でもらえる補助金は400万円です。
補助金の受付期間は毎年春頃の約1ヶ月です。予算は年ごとに変動しますが、平成30年度と31年度(=令和元年)は約30億円、令和2年度は約10億円でした。
補助金を受給するための要件とは
補助金を受給するには、以下の災害対応要件について同意し、災害発生時に確実に実施する義務がありました。
- 車両の損傷や従業員の負傷などがない限り、被災地域に向けて石油製品の配送を継続する
- 国や自治体の求めに応じて、病院や電源車への燃料供給などの災害協力を行う
- 事業所所在地で震度5強以上の地震や津波、台風等の自然災害が発生した場合は、資源エネルギー庁が運営する災害時情報収集システムで、被害状況等の報告を行う
- 事業者が保有するタンクローリーの情報を、国や団体間で共有するために設置場所や容量、油種等を登録する
- 地域の石油組合との連携を保ち、国や自治体の要請にスムーズに対応できる体制を整える
補助金の申し込み方法
補助金の申し込み手順は、申請者と石油組合または石油協会(以下、石油協会)とのやりとりが中心です。必要書類は石油協会のホームページから、以前は入手できました。
手順 | やりとり | 留意点 |
①申請 | 申請者→石油協会 | |
②補助金交付決定通知書 | 石油協会→申請者 | 予算以上の応募時は事業者地域等に配慮し比例配分支給 |
③タンクローリーの契約・発注 | 申請者→メーカー | 補助金交付決定日より前に契約すると交付対象外となるので注意 |
④納車・諸手続き | メーカー→申請者 | |
⑤補助金実績報告書の作成・提出 | 申請者→石油協会 | 期限は補助事業の完了後30日以内。納車遅れ等の事情は考慮されない |
⑥補助金額確定通知書 | 石油協会→申請者 | |
⑦補助金支払請求書 | 申請者→石油協会 | |
⑧補助金交付 | 石油協会→申請者 | 請求から交付までの期間は約1ヶ月 |
タンクローリードライバー志望の人向けの補助金とは
タンクローリーの運転に必要な免許取得の補助金がある
タンクローリーのドライバーになるには、大型免許などの自動車運転免許に加え、運ぶ品種がガソリンなどの危険物であれば、危険物取扱者などの国家資格も必要です。
これら免許取得にかかる費用には、会社や国から補助金が出ます。運送会社が独自で実施する免許取得支援制度に対して、国が実施する補助金制度が教育訓練給付制度です。
教育訓練給付制度の目的とは
厚生労働省が実施する教育訓練給付制度とは、労働者の能力開発にかかる費用に対して国が補助金を出す制度のことです。目的は雇用維持と安定です。
教育給付金制度や職業給付金など色んな呼び方がされていますが、すべてこの制度のことです。
タンクローリードライバーに必要な免許や資格も対象となるため、仕事が充実し、再就職や転職に強くなる利点があります。
教育訓練給付制度の内容とは
教育訓練給付制度は、雇用保険に一定期間加入歴のある者に対し、国が指定した教育訓練機関で受講した費用の20%(最大10万円)が補助金として支給される制度です。
教育訓練給付制度は、一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金(令和元年新設)の3つに分類されます。
- 一般教育訓練給付金は、運転免許(中型、大型、大型特殊、牽引)や英会話学校など、身近な受講内容が中心です。
- 専門実践教育訓練給付金は、看護師や調理師など、実務・専門職向けの職業訓練が対象で、タンクローリードライバーに関連する危険物取扱者や毒物劇物取扱者試験の学習講座もあります。
教育訓練給付制度を受給できる人とは
教育訓練給付制度は、雇用保険を財源とするため、支給対象者は雇用保険の被保険者です。つまり、公務員や自営業者、学生は受給資格がありません。大型免許取得予定のタンクローリードライバーは受給資格有りです。
受給対象年齢
66歳未満(65歳で資格喪失+1年の期間延長。つまり受講開始日が66歳の誕生日前日まで)。
一般教育訓練給付金の受給条件
雇用保険の被保険者期間が3年以上(初回は1年以上)。退職者は1年以内(妊娠・出産は4年以内)の受講開始が条件です。前回の補助金給付から3年以上経過している必要があります。
専門実践教育訓練給付金の受給条件
2018年の改正で、雇用保険の被保険者期間が従来の10年以上から3年以上(初回は2年以上)に短縮されました。退職者は1年以内(妊娠・出産は20年まで緩和)の受講開始が条件です。2度目以降の給付条件も10年以上の経過から3年以上に縮まりました。
教育訓練給付制度の申請方法
申請に必要なもの
タンクローリーの仕事に必要な大型免許を、教育訓練給付制度(一般教育訓練給付金)の補助金を利用してドライバーが取得する際に必要な書類についてまとめます。
- 教育訓練給付金支給申請書
- 教育訓練修了証明書
- 教習費用の領収書
- 本人・住所確認書類(免許証・パスポート・健康保険証・マイナンバー等)
- 雇用保険被保険者証
- 入金を希望する金融機関の通帳またはキャッシュカード
- 教育訓練経費等確認書
申請の手続きの流れ
タンクローリードライバーを目指す人が教育訓練給付制度(一般教育訓練給付金)を使い、大型免許を取得するケースを想定した、申請手続きの手順とポイントを説明します。
手順 | ポイント |
①教育訓練給付制度の対象となる自動車教習所を探す | 対象には合宿免許も含まれる |
②教習所での入校手続き | 入校時に補助金を使った教習を希望する旨を伝えておく。領収書は申請時に必要となるため保管する |
③教習所卒業 | 教習後に交付される『教育訓練給付金支給申請書』と『教育訓練修了証明書』を受け取る |
④ハローワークで支給申請の手続き | 前項の『申請に必要なもの』を揃える |
⑤ハローワークから支給決定 | 審査後、一定割合に応じた補助金が支給される |
補助金を利用して牽引免許も取得しておいた方が有利
タンクローリーのほとんどは大型に属する貨物自動車です。特にガソリン移送用タンクトレーラーのドライバーになるには、大型免許に加えて牽引免許も取得しないといけません。
大型タンクトレーラーを保有する運送会社は、大手石油会社と運送契約を結んでおり、系列のガソリンスタンドへの配送を中心とする、安定した仕事に恵まれます。
つまり、補助金を利用して牽引免許を取得すれば、費用の節約になるだけでなく、待遇条件の良い職探しを有利に進められるので、一石二鳥なのです。
タンクローリーの補助金のまとめ
タンクローリーの補助金には、事業者向けの緊急配送用タンクローリー補助事業と、ドライバー向けの教育訓練給付制度があります。
どちらにも共通しているのは、抽選式ではなく、正しく申請すれば確実にもらえる補助金であることです。
タンクローリーの購入補助としては最大1,000万円、そして資格取得費用には最大10万円が交付されるなど、事業者だけでなくドライバーにとっても経済的なメリットが大きく、『知らなかったら損をする』補助金と言えるでしょう。
申請条件や要件事項を良く理解した上で、有効的に活用しましょう。
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