タクシードライバーにとって、長距離ご指定のお客様が乗車されることはとても魅力的だと思います。しかし帰り道での営業活動には注意が必要なのをご存知でしょうか?そこには法律に定められた厳密なルールが存在することを知っておきましょう。
タクシードライバーにとってエリア外営業は法律で禁止されている
タクシーの営業区域について具体的に知っておきたいのは、道路運送法という法律の第20条になります。
この条文では「一般旅客自動車運送事業者は、発地及び着地のいずれもがその営業区域外に存する旅客の運送(路線を定めて行うものを除く。)をしてはならない。」という禁止行為が定められています。平たく言うと、「乗せた場所」あるいは「降ろす場所」のいずれかが、定められた自社の営業エリア内である必要があるというわけです。
実際にドライバーとして仕事をする上では厄介な決まり事と思うかもしれませんが、この条項自体は、タクシー事業者の需給バランスを保つために大切な決め事であることは言うまでもありません。当然、同エリア内では料金設定も一律と定められています。
営業区域(営業エリア)を守る上でのタクシー会社やタクシー運転手のルール
国土交通省が定めた法律にしたがい、タクシー事業を運営する事業者も、そして実際に営業活動をするドライバーにも、ルールを守る為の義務が課せられています。
タクシー会社(事業者)が守る営業区域ルール
タクシー事業者は、管轄官庁である国土交通省に営業の許可を申請するのですが、この際に営業エリアも指定して申請することになっています。「決まったエリア」が無いと、道路運送法20条の禁止事項が成立しませんからね。
この営業エリアは、全国どの地域でも「~~地区」「~~交通圏」などの表記で分けられており、区域にある運輸支局が統括しています。(参考までに、許可申請後の法令試験の受験や、運送約款の作成など、実際に事業を開始するまでにやるべきことも多くあります。)
タクシードライバー(運転手)が守る営業区域ルール
個々のタクシードライバーは、乗務記録の義務が法律(旅客自動車運送事業運輸規則第25条)に基づいて課せられており、「乗車地」「降車地」の情報も記録項目として定められています。
タクシーを利用すると、ドライバーの方が何か書いているのをご覧になったことがあるのではないでしょうか?あれが乗務記録なんですね。ちなみに「乗・降車地」以外には、「人数」や「運賃」なども記載項目に定められています。
タクシードライバーにも営業責任があることに注意
なお、ドライバーによる指定エリア外営業違反が露見すると、乗務員資格の停止措置や、ひどくすると事業者自体の営業停止措置がとられる場合もあるのです。処分の重さから、どれほど重要なルールであるかがお分かりいただけることでしょう。
というわけで、会社側は「自分たちの営業エリアはこの範囲にします」という申請する立場であり、実際にルールの厳守を問われるのは現場のドライバーという構図になっていることがお分かりいただけたでしょうか。
「回送」表示で乗車拒否を勘違いされる問題を予防
そうは言っても、本音を言えば路肩でタクシーを待っている人がいれば乗せたいと思うのが人情です。ルールだからと言って、無視して「乗車拒否された」と思われるのも、本意ではありませんね。
乗車拒否の問題についても色々とルールがありますが、一先ず、指定エリア外からの戻り中については、「回送」の表示を出しておくことでこの問題は回避できるでしょう。
営業区域外(エリア外)で客を乗せる場合の注意
もし指定エリア外でお客様に乗車いただく場合、お客様の目的地が営業エリア内であるかしっかり確認することが必要です。目的地が営業エリア内であれば、お乗せいただいても問題にはなりません。
営業エリア外への乗車をご希望の場合は丁寧に断る必要があります。あなたの接遇スキル・人間力を発揮する必要があります。お乗りいただけない事情をキチンとご説明し、ご納得いただくために必要です。ご納得に時間がかかってしまう可能性や、最終的にトラブルに発展したりする可能性を考えると、やはり「回送」表示で戻るのが一番効率的なのではないでしょうか。
営業区域外(エリア外)で客を乗せるとバレる可能性が高い
押し寄せるIT化は、タクシー事業についても例外ではありません。この営業エリアのお話でいくと、GPSによる走行履歴の記録システムが大きな効果をもたらしています。
ドライバーの記録簿をつける手間を削減できる機能はもとより、「どこで乗せて」「どこで降りた」も一目瞭然となるわけですから、不正防止としての効果は絶大といえるでしょう。
タクシードライバーが営業区域違反をするとどうなるの
タクシーの運転手がこの営業ルールを破って違反した場合、当局から罰則としてタクシードライバーとしての乗務員資格停止になったり、場合によっては事業者の営業停止処分となるばあいもあるので、必ず気を付ける必要があります。また、業界での評判も広まってしまうため、自分が運転しているエリアをしっかり把握しておきましょう。
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