様々な業界で人材不足が叫ばれますが、トラック運送業界でも深刻な問題となっています。トラックドライバーの求人は多数あっても、なかなか人が集まらない背景には労働条件の問題があることが頻繁に挙がりますが、なかでも残業と労働時間は根深い問題です。今後の改善が望まれるトラック運送業界の残業に関する問題点とはどのようなものでしょうか。
長すぎるトラックドライバーの労働時間
労働条件の一番の問題点として挙げられるのがこの「長時間労働」です。
トラック運送業界では月に60時間以上の残業をしている事業所が中小企業では平均13.4%、過労死ラインを超えた100時間以上では平均0.7%あるというデータが出ており、残業に依存している体制の改善が求められています。
なぜ運送トラックには残業が多いのか
運送業という仕事の性質上、思い通りに業務が進まないことが多いというのも残業が多い理由の一つです。荷物の多さは日によってばらつきがあったり、事故や交通渋滞などの道路状況によっても運送が滞ってしまうこともあります。
そして人手不足を少ない人数でカバーするために、一人当たりの労働時間が長くなってしまっているという実情もあるのです。
トラックドライバーの残業を減らすための働き方改革
政府は残業を減らすために残業時間に上限を設定しました。これまでの労働基準法でも残業時間に上限は定められていましたが、労働組合の合意があれば上限なく増やすことができていました。これに罰則を科して上限を守らせる改正労働基準法が2019年には施行される見通しです。
さらに、「高度プロフェッショナル制度」によっても働き方改革の成果が得られようとしています。高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識を有した一定水準以上の年収を得る労働者は、労働時間規制の対象から除外されるという仕組みです。対象とされた労働者は、時間外労働などの割増賃金の支払いを受けない代わりに、自由な時間で働くことを認められるという制度です。これによって、残業手当ありきの働き方に改革がもたらせようとしています。
このように国を挙げて働き方改革が進められていますが、実際に残業を減らすためには企業の努力が必要になります。労働基準監督署も、今後は違反企業を監視して取り締まる機能の強化が求められています。
運送業界の残業問題に向けたトラック協会の取り組み
全日本トラック協会でも運送業界が抱える問題点を改善するため「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」を制定しました。
2019年4月に改正された労働基準法が適用され、その後5年間は猶予期間となります。その後、2024年の4月から時間外労働の上限規制に罰則が科されるようになります。
それまでにトラック協会はトラックドライバーの処遇、労働環境、労働条件の改善に努めるとしています。
その取り組み内容は、荷待ち時間と荷役時間を削減する、高速道路を有効に活用する、市街地での納品業務を行う際の時間を短縮する、中継輸送の拡大などです。
これらの取り組みによって労働生産性を向上させ、時間外労働年960時間超のトラックドライバーが発生する事業者の割合を0%にすることを2024年までの目標としています。
トラック運送業界の今後の課題
資金や労働条件は労使自治が決定権を持っていますが、最低賃金と労働時間の上限については国が決定し、違反した場合は罰則が課せられます。
トラックドライバーの労働時間については、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」により定められています。
長時間労働はドライバーの健康を損ねるだけでなく、過労死の原因となってしまうこともあります。重大な事故につながることもあるので、早急な改善が求められています。
人材不足に悩まされているトラック業界は、若年労働者を確保し、優秀な人材を業界に呼び込むことが今後の一番の課題ともいえますが、そのためにはまずは労働条件の改善、つまり長時間労働の見直しが近道といえるでしょう。
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