引っ越しや廃品回収の際、軽トラックに荷物を積んでいる場面を見かけたことはありませんか?
もちろん、荷物をただ乗せるだけでも運搬は可能ですが、万が一にも積み荷が道路に落下した場合には道路交通法で罰されることになりますし、落下物が第三者に被害を与えれば、賠償責任が生じます。
積み荷が落ちないような工夫の1つとして、独特な締め方や結び方(ロープワーク)があり、なおかつ荷積みに適した素材が使用されているのです。
トラックのロープワークとは
縄やロープの結び方であるロープワークには長い歴史があります。その状況や用途に応じて工夫され、たかが1本のロープとはいえ、多種多様な結び方が存在しています。
トラックの荷積みも例外ではなく、今でもなおこのロープワークが随所に活かされており、荷物が落ちないような締め方が活用されています。
結び方としては、南京結び(別名万力結び、トラック結び)、輸送結び、もやい結びがあり、状況に応じて使い分けられています。それぞれしっかりと固定できる一方で、きつく結び過ぎて荷物を傷つけてしまう可能性もあるので、梱包材や毛布をあてがうなどして、対策をしなければなりません。
なぜトラックはロープの結び方が大事なのか
トラックで物を運ぶときにあると便利なのがロープです。特に平ボディの荷台に置いた荷物は、走行中の横揺れや振動が原因でバランスを崩しやすいのでロープを使って固定させます。
ただし、いい加減な結び方をしていて途中でロープがほどけてしまっては意味がありません。トラックドライバーとして仕事をするなら、ロープワークを学んでおくと良いです。
ロープワークとはロープの結び方や、紐の種類など、ロープの取り扱いに関する知識全般のことをいいます。
ロープワークは荷締めだけでなくアウトドアや日常生活でも役立つので少しずつマスターしていきましょう。
トラックが積み荷を落としてしまった場合の罰則は?
万が一、トラックから積み荷を落としてしまった場合ですが、一般の道路と高速道路にて罰則が分かれています。
まずは高速道路についてですが、落下させた時点で高速自動車国道等運転者遵守事項違反が適用され、3ヶ月以下の懲役もしくは5万円以下の罰金、または10万円以下の罰金が科されます。
さらに落下物が原因で死傷者が出た場合には、過失運転致死傷罪が適用されます。こちらは7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金と、非常に重たい罪となっています。
一方、一般の道路の場合には落下させただけでは罪にはならず、落下物で死傷者が出た場合に、過失運転致死傷罪が適用されます。
トラックロープの結び方の種類
トラックのボディに荷物を積んで固定するときに良く使われる結び方は、しっかり縛れて張り具合を調節できる『南京結び』や『輸送結び』です。
その他にも、ロープの先に輪を作る『もやい結び』や、ロープを物に結びつけるときに使う巻き結び、ふた結び、ねじ結び、バケットヒッチなどロープの結び方の種類は豊富です。
トラックのロープ素材と種類
トラックのロープはその素材で特性が分かれる
ロープは、ビニロン製、綿製、麻製、ナイロン製、ポリエステル製、ポリエチレン製など、その素材の種類は豊富です。
そのロープの素材ごとに、耐熱性、耐水性、耐薬性(化学薬品などに対する強さ)、耐候性(気候の変化に対する強さ)など、さまざまな特性を持つため、その場所や場面によって、一番使用に適したロープが利用されます。
なお、積み荷を縛るロープとして最もポピュラーなものはビニロンテープです。綿や麻のロープより2倍近くの強度がありますが、ポリエステルやポリエチレンなどの科学合成繊維のロープとの強度はほぼ同じです。ちなみにナイロンロープはビニロンテープの2倍の強度があります。
ビニロンロープの特徴と価格
ビニロンロープは素材にビニロンという合成繊維を使った最も一般的なロープです。しなやかで滑りにくく耐久性にも優れているので、トラックに重量のある荷物を固定するときによく使われます。
特に、株式会社クラレが発売しているクレモナロープはポリエステルを混合し、水濡れで硬くなるビニロンの欠点を改良した商品で、ロープの定番アイテムとして人気があります。
ちなみにビニロン繊維は1950年に日本国内のメーカーであるクラレが工業化に成功した国産第一号の合成繊維です。
ビニロンテープ |
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太さ | 6mm~16mm程度 |
長さ | 50m~200m程度 |
税抜き価格 | 3,990円~20,900円程度 |
メートル単価 | 40円~100円/m程度 |
マニラロープの特徴と価格
マニラロープはマニラ麻の繊維から作られたロープです。天然素材なので静電気の心配がなく、自然に土に戻る性質を持ちます。丈夫で水を吸っても伸びにくいので古くから船舶関連で利用されていました。
現在では高価なマニラ麻の代わりにサイザル麻を使って着色したものがマニラロープとして売られています。トラックでの荷物固定だけでなくアウトドアにも使えます。
マニラロープ | |
太さ | 6~16mm程度 |
長さ | 100m~200m程度 |
税抜き価格 | 8,990円~31,900円程度 |
メートル単価 | 90円~150円/m程度 |
リキロンロープの特徴と価格
リキロンロープは軽くて安い素材のポリエチレンに、ポリエステルを混ぜて縛りやすくしたロープです。
特徴は、ひと目ですぐ分かるオレンジがかったロープの色に加え、軽くて引っ張りにも強いところです。オレンジはポリエチレン繊維の色です。
トラックで荷ほどきをする回数が多くなる近距離での荷物輸送に便利です。
リキロンロープ | |
太さ | 9~12mm程度 |
長さ | 20m~30m程度 |
税抜き価格 | 1,650円~3,000円程度 |
メートル単価 | 80円~100円/m程度 |
ポリプロピレンロープの特徴と価格
ポリプロピレン(PP)ロープは非常に強力なポリプロピレンが素材に使われたロープです。合成繊維ロープの中で一番軽く、水に浮く性質があります。太いものは漁業などの水場作業用に、細いものは家庭の荷造り用に活躍しています。
『PPロープ』の名前でホームセンターでもよく見かけるタイプです。価格が安いのでトラックでのちょっとした荷物運びに重宝します。
ポリプロピレンロープ | |
太さ | 5~10mm程度 |
長さ | 70m~300m程度 |
税抜き価格 | 229円~579円程度 |
メートル単価 | 2円~3円/m程度 |
トラックロープ自体の結い方にも種類と用途がある
ロープは1本の細い糸をまとめたものをねじり合わせてつくられています。
その細い糸である繊維糸を集めたものをヤーンといい、さらにヤーンを数十本束ねてまとめたものをストランドといいます。このストランドの数によってもロープが持つ特徴が変わります。
ストランドを3本ねじり合わせて作ったものを3打ちロープと呼びますが、基本的な構造とはいえども最高の強度を誇ります。
それ以外には、強度に加えショックを吸収することに長けた8打ち(別名クロス打ち)、強度は弱いが手触り感が柔らかくねじれにくい12打ち(金剛打ち)、表面が滑らかで摩擦抵抗が少なくよじれにくい16打ち(ブレード打ち)などがあります。多く編めば編むほど強度が増すというわけではなく、その編み方によっても使用用途が分かれます。
南京結びとは・結び方
南京結びの特徴
南京結びは重量物や大きい荷物をトラックにしっかり固定できる結び方です。
輸送中の振動にも緩みにくく、強固に締め付けられるので『万力結び』と言われるほどです。ロープの末端で固定するのでアジャスターとしての使い方もできます。
南京結びの結び方
南京結びは下記の手順で結びます。
- 荷物の上にロープを渡し、その端をトラックのボディ脇にあるフックに掛けます。何度も脱着するならカラビナを使うと良いでしょう。
- ロープを左手に持ち、さらに端側にあるロープを右手で掴んで20~30cm程度の輪っかを作ります。
- 右手で作った輪の根本に左手のロープを2回巻きつけます。2回目の巻きは1回目よりも右側にくるようにするのがポイントです。巻きが重なるか左側に来るとあとで緩みの元になります。巻きつけたあとは上に小さな輪が、下に大きな輪ができた状態になります。
- 下の大きな輪の中に、端側のロープをくぐらせて、そのままフックの方に向かって引っ張ります。
- ロープがフックに届いたら引っ掛けます。この時点でロープがしっかり荷物と交差しているかを確認します。あとはロープの先を引くと締め付けられていきます。この時点で締まらないとか逆に緩むようだと結び方が正しくないのでやり直してください。緩み防止のため、左手で上の小さな輪と荷台方向に伸びたロープを握ったままにしておくと確実です。
- 下方向だけに引っ張らず、手前に引いては下に引くことを繰り返し、荷物がしっかり固定されていることを確認します。
- 最後に余ったロープを荷物の間に挟み込んで完成です。
なお、手順4で下の大きな輪を一度ねじってからくぐらせる方法もあります。より強固になりますが、ほどきづらくなります。
南京結びにおすすめのロープ素材は丈夫でしなやかなビニロンロープです。
南京結びのコツと注意点
結び終えたあとはロープを触って荷物を少し押してみるなどして張りをチェックしてください。上手くできなければ二人で行うのも良いでしょう。
輸送結びとは・結び方
輸送結びの特徴
輸送結びは滑車の仕組みを使って、引いた力の2~3倍の強さで縛れる実用的な結び方です。
複数のかさばる荷物をトラックに積むときに活躍します。ロープの摩擦や負荷で梱包を傷つけることがあるので、毛布で保護しておくと良いでしょう。
輸送結びの結び方
平ボディトラックに荷物を固定するときに便利な輸送結びですが、その前にロープの端をフックに掛けるための『輪っか』を手軽に作れるダブルエイトフィギュアノットの結び方を紹介します。
強い力で引っ張られても輪がほどけず切れにくい特徴があります。
ダブルエイトフィギュアノットの結び方
- ロープを数十センチ折って二重にします
- 二重になった先端を時計回りに曲げ、軸の上を交差させます
- 次は反時計回りに曲げて下から交差させます
- 手順2で出来た穴に先端を上から通して引っ張ると輪ができて完成です。
ダブルエイトフィギュアノットで作った輪を荷台の向こう側のフックに掛けたら、次は輸送結びです。
輸送結びの結び方の手順
輸送結びは下記の手順で結びます。
- 左手にロープを持ち、右手はその先を折った状態で握ります。輪を潰したような状態になります。ここまでは南京結びと同じです。
- 左手で握ったロープを右手の輪に1度巻きつけます。
- 巻き付けると上と下に輪が出来た状態になりますが、上の輪の先端を持ち、荷物側に伸びているロープに対して結びつけるようにします。結んだあとは右向きに小さな輪ができますが、これが外れないよう適度に引っ張って結び目を強くしておいてください。
- ロープの端側を下の輪にくぐらせて引っ張り、フックに掛けます。このときに手順3でできた小さな輪が崩れず残っていることを確認してください。
- 形を調節しながらロープの端を引っ張ると動滑車のように締められていきます。
- 荷物をしっかり固定できたら完成です。
輸送結びのコツと注意点
輸送結びに公式な結び方というものはなく、南京結びと輸送結びを合わせたような結び方をする人もいます。
もやい結びとは・結び方
もやい結びの特徴
もやい結びは船を繋ぎ止めておく『もやう』が語源で、トラックのボディに積んだ重量のある荷物をロープで固定したり、長時間運搬したりするときの増し締めにも使える結び方です。
慣れれば片手で結べるので『自在結び』とも言われます。
もやい結びの結び方
もやい結びは下記の手順で結びます。
- ロープを結び付けたい物に絡めて輪を作ります。このときに交差したロープが根元側よりも上を通るようにします。
- できた輪に対して下からロープを通します。
- ロープの先を根元側に対して下から交差させます。
- 交差させた先端を先ほど通した輪の中へ上からくぐらせます。手順1で作った輪に往復で2度くぐらせたことになります。
- このままロープの先と根元を持ちながら引っ張ると結び目が出来て完成です。
なお手順4のときにロープの先を折った状態で輪にくぐらせて結び目を作ると、先端を引いただけで簡単にほぐすことができます。いわゆる『引き解け』の形になるので、一時的にくくりつけておくだけの時に使うと便利です。
実践で使う前に何度か練習をして目をつぶってもできるくらいにしておきましょう。トラックで仕事をしていると見通しの悪い夜間に外で荷縛りをすることもあるからです。
短時間で結ぶことができるもやい結びですが、平ボディトラックで重量のある荷物を運ぶときは主に南京結びや輸送結びを使って固定し、荷姿が不安に感じたらもやい結びを補助的に使うといった利用方法がおすすめです。
もやい結びのコツと注意点
手順1で輪の作るときに『交差したロープが上』に来ていることを確認してください。下に来た状態のまま先の手順に進んでしまうと結び目がきちんとできず輪の形をキープすることができません。
もう一つの注意点は作った輪に指を挟まないことです。特に小さすぎる輪を作ってしまい指ごと挟んでしまうと解くのが面倒になりますので、簡単といっても油断をしないことです。
荷崩れを防止するために
荷物の積み方に偏りがあれば荷崩れが発生することもあるので注意です。特に荷物を積む位置によってはカーブや坂道の傾斜で横転したりハンドルを取られたりすることもあります。重量バランスも考えつつロープでしっかりと固定しましょう。
引っ越しでよく使われるロープの結び方
引っ越しの時にトラックがあれば家財道具をまとめて運べて便利ですが、プロの引越し屋さんでもなければ個人で箱型トラックに乗る機会はなかなかないでしょう。
引っ越しでトラックをレンタルするならロープで荷物の固定が必要なあおり型などの平ボディが現実的です。このときに役立つ結び方が今回ご紹介した南京結びや輸送結びです。
どちらもロープワークの顔と言えるほど実績のある結び方です。自己流に頼らず結び方をしっかり覚えて仕事や日常生活で活用しましょう。
トラックロープの端末の処理
トラックに積載した荷物を固定し終えて長いロープが余ったときの結び方は、ロープを再びボディのフックに掛け、張られたロープの下を通して引っ張りながら短くなるまで結び付けます。
あとは端末を荷物の隙間に押し込めば完了です。
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